新築への薪ストーブの導入を検討されているご夫婦からメッセージをいただきました。
薪ストーブひとつで家中暖まると聞きますが、実際のところどうなのでしょうか?
というものです。
結論から言いますと、私の家(50坪2階建て)は、ほぼ家中暖まります。使用している薪ストーブはバーモントキャスティングス社のアンコールで、カタログに偽りなし!といった暖房能力だと感じています。
”ほぼ”と書いたのは、土間のような仕様にしたため冷え切っており暖まらない部屋もあるからです。
どんなストーブをどんな状況で導入しても家中暖まるか?と言われると、ケースバイケースと言えるでしょう。我が家を例にとって解説してみたいと思います。
薪ストーブ1つで家中暖める。キモは”家づくり”にあり?!
1台の薪ストーブ家中暖めるには、焚き方や火持ちの良い薪を使う、ということよりも、家づくりにキモがあると思っています。我が家で「ストーブを入れるための家づくり」をしたときのことをまとめてみます。
ご参考頂ければ幸いです。
熱を逃がさない設計
熱を逃がさない = 気密性を高める
ということになります。
私は建築のことはよくわかりませんが、家づくり時の設計士さんには「遮熱と気密のバランス」についてよく聞かされました。
外の冷たい空気を家に入れず、中の暖かい空気を外に出さない工夫の話です。
バランスが大切になるのは日本の四季に対応するためで、夏は、朝夕の冷たい空気はできるだけ取り込みたいですよね。冬のことだけ考えて、気密性だけを高めても住みにくい住宅になる。とのことでした。納得です。
この辺りのバランス感覚は、ストーブをメインに据えるハウスメーカーさんの腕の見せ所でしょう。断熱材等にも詳しいメーカーさんだと安心です。
ストーブ導入案件をたくさん扱っている”慣れた”ハウスメーカーさんと、ストーブ住宅について話をすすめられるといいですね。
熱が伝わりやすい構造
熱が伝わりやすい構造 = 間取りやストーブの設置位置
となります。
ストーブが発する熱を輻射熱といいますが、輻射熱はストーブが発した電磁波(遠赤外線)がモノに当たった時に発する熱のことです。※間違ってたら訂正願いますm(__)m
遠赤外線は物体の表面に当たって熱となり、物体の内部には熱伝導という形で熱が伝わっていきます。この熱の伝わりが、家中に広がることで、「薪ストーブで家中暖かい」という状況が作られるわけですね^^
この熱の伝わり方を考えると、家の間取りや薪ストーブの設置位置などを最適化することが非常に重要になると理解できるでしょう。できるだけ家の中央に薪ストーブを設置し、煙突を利用して1~2階までまんべんなく暖める、という設計になってくると思います。
また、薪ストーブの煙突は、基本「曲げない」のが一番燃焼効率が良くなります。我が家の煙突は4回曲がってますが、それでもできるだけ燃焼や排煙の妨げにならないよう設置していただきました。
上記のような ”薪ストーブを主暖房として使うための徹底した家づくり” があって初めて、「ストーブ1台で家中暖かい」という状況が作れると思っています。
ストーブ選びも重要なポイント
薪ストーブで暖かい住宅は、設計がキモだとお伝えしました。
”ストーブ運転に特化した住宅があってこそ” ストーブは能力を発揮で居るわけですが、そもそもストーブにも暖められる能力範囲があります。
例えば我が家のバーモントキャスティングス社製:アンコールは
暖房面積:約18~50坪(約60~167㎡)
燃焼効率:86%(触媒式)
最大薪長さ:55cm
引用:ファイヤーサイド
といった能力があります。住宅サイズに合致した能力を持つ薪ストーブを選定することも、暖かい冬を迎える必須条件なんですね。
ちなみに、、、アンコールに決めた理由ですが、
『料理名人』として、”ストーブ料理用のアクセサリーが多数用意されている”ということも大きかったのですが、触媒方式で火持ちが良く、ご近所への嫌な匂いを出しにくい設計であることも決め手になりました。
触媒方式を世界で初めてリリースしたダッチウエストのサイトには以下の記述があります。
燃焼室で燃えた薪の排出ガスは、一次燃焼の段階では燃焼温度が低いために不燃焼ガスが発生します。この不燃焼ガスを「キャタリティックコンバスター(触媒)」に通過させることによって、不純物の90%をも再燃焼させることに成功しました。
煙突からの排気はかげろうのような空気の揺らめきが見えるだけで、煙を確認することはできないでしょう。大気に汚染物質がほとんど出ていないことの証です。不純物が少ない分、タールの発生も抑えることができます。
引用:ダッチウエスト・ジャパン
ストーブの構造や機種によって、暖房能力ばかりでなく環境への配慮にも違いがあることは理解しておきたいですね。匂いや煙を出さない薪ストーブはありませんが、設計的に環境配慮されたストーブもあるのです。
新築ができて、さぁストーブを焚くぞ!!となったときに、ご近所から「煙がくさいからやめてくれ!」と苦情を言われた日には泣くに泣けませんから。
暖房機としての薪ストーブのデメリット
1点お伝えしておかなければならないのは、主暖房としての薪ストーブを考えた時のデメリットです。
輻射熱によるじんわりとした暖かさや、調理器としてのストーブには、良い面ばかりがクローズアップされますが、実はやっかいな面も孕んでいます。
我が家でも、ストーブを主暖房として使ってみて初めてそのデメリット・融通の利かない点に気づきましたので以下にまとめます。
室温調節ができない
小学校で「暖かい空気は上に行く性質がある」と習いましたよね?ストーブの熱も上に上に行く性質があります。
我が家は2階建てで、2階のほぼ中央に煙突が走っています。2階のどの部屋も暖かくなるのですが、ちょうど良い室温をキープできないんです・・・。
そう。薪ストーブで室温調節は至難の業なのです。
基本的に2階の方が暖かくなりますので、1階を十分暖める頃には2階は真夏のように熱いのです。真冬に窓を開けて寝る・・・というアンビリバボーなことが起こります(笑)
乾燥する
乾燥は薪ストーブを導入するうえでは避けて通れない課題です。
ストーブの天板に乗せるスチーマーなどもありますが、24時間焚くような想定の場合、この程度の加湿では追いつきません。
我が家では寝室に加湿器を導入したり、洗濯物を部屋干しする等の対策を取っています。
慣れもありますが、乾燥すると風邪を引きやすくなるので、湿度管理には注意したいですね。
電気代のかからない、エコな加湿器もおすすめですよ^^
薪ストーブの乾燥対策 電気を使わない加湿器が経済的でおすすめ
まとめ
薪ストーブを主暖房とするためには、
- 部屋の間取り
- 家の構造(遮熱・気密等)
- ストーブ設置位置
など、設計段階での工夫が肝要です。
加えて、ご近所への煙等の配慮、そして住宅サイズに合ったストーブの選定を検討していけば、晴れて「薪ストーブで家中暖かい生活」が望めるでしょう^^
ストーブでいつでも家が暖かい状態を作るには、”潤沢な薪の確保”という課題もあるのですが・・・^^;
シーズン中ストーブをずっと焚き続けるには、どれくらいの費用感を見ておけばよいのか。そのあたりの試算はこちらを参考になさってください。
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